【映画レビュー】『拘束』センシティブなモチーフゆえに起こった欠乏感

おもしろそうな映画を探しているときに出会った短編映画『拘束』。イギリスで実際に起こった「ジェームス・バルガー事件」をモチーフにしている。

30分という尺のせいか軽い気持ちで再生したが、鑑賞後には複雑な余韻が残った。とりあえず所感を綴ってみたい。

まず特筆すべきは、子役たちの演技力である。私は『スタンド・バイ・ミー』が好きだが、それを彷彿とさせる演技だった。また、子役だけでなくジョンの父親の演技も印象的だった。「愛の反対は無関心」とはよく聞く言葉だが、それを見事に演技で表現していた。対比して描かれた母親の失われない愛情を引き立たせる演出にもなっている。

演技指導や演出からは、監督の確かな手腕が伝わってくる。実際、本作はアカデミー賞短編部門にノミネートもされている。ただ一方で、「センシティブな事件を扱った割に、センシティブな部分を避けている」という印象が強かった。

作中で子供は、人を殺め、友人を裏切り、嘘をつき、被害者への誠意を示さない。”子供の残虐性”は見事に描いた。実際にあった事件なので、より説得力も増す。それこそ作中で、テロップを使い「これは実話」とアピールしてくる。

作品が終わった時に真っ先に感じたことは、もう少し踏み込めなかったのだろうか?ということだった。短編作品という点を考慮しても、モチーフがセンシティブなだけに欠乏感がある。

そもそも、実際の事件をモチーフにした理由は何だったのか。表現に説得力を持たせるためか、それとも話題性を得るためか。

もしそうなら、この作品が「子供の残虐性」ではなく、「大人の残虐性」が透ける作品に思えてしまう。実際、本作は被害者家族から映像化に対する抗議を受けたようだ。

完成度の高い短編映画であることは間違いない。だが同時に、実話を扱うことの難しさについて考えさせられる一本だった。

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